後半勝負よりも、ペース配分のレベルアップを
あなたはフルマラソンの走り方で、前半で貯金を作る「突っ込み型」ですか?
それとも、前半抑えて周りが落ち始めた後半に上げていく「後半タイプ」ですか?
どちらでも良いと思いますが、その日の体調や練習量で左右されます。
前半型は、前半で体力を使ってしまうと中間点を過ぎた頃や30キロ以降が悲惨な展開になるでしょう。歩くようなスピード、戦意喪失、吐き気に自己嫌悪、出場したことへの後悔・・・・・。
「こんなはずじゃなかったのに」
「俺、何やってんだろう?」
「リタイアするか、このままでもゴールするか」
色々な思いが頭をよぎってくる経験は今までなかったですか?
私は何回もありました。
2001年のマウイマラソンで、中間から吐き気に襲われて3時間29分。
2004年のホノルルマラソンで、30キロ以降の吐き気とめまいで2時間58分。
2011年スポーツソウルマラソンで、中間からのスタミナ切れと吐き気で3時間1分。
2014年別府大分毎日マラソンで、中間点からのスタミナ切れで3時間1分。
「体調悪くても、速いじゃん」
そう思われそうですが、タイムがどうよりも「力を出し切れなかった自分」にとても悔しさが残るものです。
私の場合は、自己ベストや年代別入賞、海外レースでの賞金など「見返り」を意識しすぎるとプレッシャーで失速する傾向もありました。
一番残念だったレースは、2014年の別府大分。
当時の福岡国際マラソンB部門の参加資格タイムは「2時間40分以内」。自己ベストを7分上回ってそのタイムを出そうと試みましたが、ハーフを超えてから大きく失速。
30キロ以降はキロ6分程かかる歩くようなスピードで、抜いていくランナーに励まされる状態でした。
「もうこんな悲惨なレースはしたくない!」
そう思って認識したのは、
「日々の練習の積み重ね」
「後半も勝負出来るくらいの体力温存」
「前半に貯金を作るよりも、自然体で走るペースのスピードアップ」
この3点でした。
特に三つ目は
「速く走ってるつもりはないのに、なんかいつもよりもペースが速いな」
そう認識があった時は、体調が良い証拠です。
1キロ4分0秒前後が心地よいのに、無理してないのに3分50秒前後で走れた時が私にもありました。その時は青梅マラソンの30キロでしたが、心に余裕が出来ると足と呼吸にも良い相乗効果が出てきます。
ペース配分を上げていくには、400mを10本などのインターバル走りが有効であり、スタミナ布にならないようにゆっくり目のジョギングやペース走もするべきです。
「前について行く」と言われる走り方が一番良いですが、その時の自分の余力を乗り越えてしまうと後半失速につながりますので、自分の足と呼吸を考えることをおすすめします。
レース中の「自分の足と心臓との会話」が出来るようになると、無理をどの程度するとタイムが出せるか、後半失速するかがわかってくるようになります。
無理をしすぎないことも、その時の駆け引き面でも大事でしょう。
上り坂でのスタミナ、対応力
毎年、8月の第一日曜日に開催される静岡県の富士登山駅伝大会。昨年は、コロナ感染防止のために中止になりましたが、今年は開催すると発表があったようです。
この大会は、静岡県御殿場市で開催され40年以上の伝統の大会で、麓の陸上競技場から富士山山頂までを往復する大会。1チーム6人で、担当の区間の往路と復路で一人の選手が2回走る独特の大会です。
御殿場市の陸上競技場をスタート地点としていましたが、40回大会以降は御殿場駅前がスタート地点になっています。
駅伝はチームとして走る団体の競技ですが、この大会はロードコースと違い、上り坂の勾配がきつく、砂利と土の登山道の走りづらさがあることが難点になります。
あなたは、上りと下りのどちらが得意でしょうか?
私はアップダウンが激しい100キロマラソンも完走しているので、どちらも苦手意識はありませんが、駅伝のような自分だけのんびり走っているわけにはいかない大会の場合は、意識が変わってきます。
上の写真は登山コースを走る5区、7区の砂走り。私はこのコースを2回走りましたが、靴に石が大量に入るので痛みと走りづらさの記憶が強く残っています。
上り坂では前傾姿勢で走ることが基本ですが、下りでも前傾になることでスピードを抑えず加速しながらに走り切ることが出来ます。
上りは太もも、くだりはふくらはぎや太ももの下側の筋肉に刺激と疲労がきますが、
あなたはレース中に影響が出たことはありますか?
私は、足の披露と気持ちの辛さは別で考えるので「足が動かなくても、気持ちで負けるな!」と100キロマラソンの95キロ地点などでは考えています。
人生楽あれば苦あり。
走ることも簡単ではありません。
でも、必ずやってくる試練だと割り切って、普段の生活のように乗り越えていくことが大事でしょう。
出場した大会で苦しんだことも、次の大会で走りきれる経験として考えれば道の勾配の辛さも損ではありません。
どんな大会でも走りきれる体力と対応力が身につけられれば、自信につながります。
残り12キロの辛抱
あなたは何のスタートラインに立って、走り出そうとしているだろうか?
自己ベスト、目標の大会への出場、ライバルに勝つこと。人によって様々です。
人との勝ち負けが全てではないこともあれば、
自分との勝負がメインのこともあるでしょう。
「自分に負けたせいでタイムが出せなかった」
後半の失速が響いたランナーは似たようなことを発言します。
あなたは「あと、12キロだけだ」とロングスパートに気持ちを切り替えられますか?
3時間を切るためには、遅くとも30キロを2時間6分前後までには通過しないと、
残り12キロは乗り切りられません。
私が初サブスリーを達成した、2001年つくばマラソンでは30キロの通過は
1時間59分50秒だったことを覚えています。
「30キロの壁」と言われるだけあって、ここからの12キロは「残り約50分の辛抱」と切り替えますが、どうしても体の動きが鈍くなるものです。
それでも、頑張るために私は
「ゴール地点でたくさん飲み食いするぞー」
「今夜のビールは美味いぞー」
このようなポジティブなご褒美を考えます。
実際には残り12キロは51分程かかることが多いですが、「最後の踏ん張り」が出来るかどうかが分かれ目になります。
ただ、100キロマラソンでの30キロの通過は、私は
「まだまだウォーミングアップの距離」だと考えています。
「足が動かない、上がらない。
呼吸が苦しい。
体が重い。
気持ち悪い」
レース後半にはこのような状況が体にのしかかり、実業団選手でも後半の失速は起こるものです。それでも走り切るのは、
「スタートしたからにはゴールしたい!」
そのような気持ちがあるからでしょう。
後半の疲れでタイムが出せなかったことよりも、途中で諦めた後悔はずっと心に
残るものです。そうならないように日々の練習の積み重ねをしていきましょう。
気持ちで負けなければ、今までの実績が気にならないものです。
1秒でも速い自分への更新
自分の自己ベストタイムを更新した時、
目標タイムが出せた時。
今までの努力が報われた瞬間は喜びがあるし、達成感があります。
でも、そのためには今までの自分を越えるための練習が必要です。
「努力は裏切らない」
「自分を信じて頑張ってきた」
トップレベルの選手がよく言う言葉。あなたも共感できる瞬間があったのではないでしょうか?
結果を出すには過程が大事。
そのためには、モチベーション、環境、メンタル、時間、仲間。
色々な要素が必要になってきますが、やはり「練習環境」は大事です。
仕事をしながら休みの日などに走っている方がほとんどだと思いますが、仕事を言い訳にせずに「どうしたら練習時間を作れるか?」を工夫することを考えていきましょう。
仕事は簡単には後回しには出来ないもの。
練習時間をほぼ決まった時間に確保できる、大学生や実業団選手のような練習が出来ないと割り切ったのならば、「休みの午前中に走る」と時間を決めると良いでしょう。
そして「早くなりたい目的」を決めるには、目標タイムを作ることが早いです。
「どうしても、別府大分で3時間を切りたい!」
そのように考えているとしたら、レースがある2月に向けて3ヶ月前程からじっくり距離とスピード練習を積み上げて行くことが必要でしょう。
私は毎週水曜日に走友会の練習に参加できていた頃は、「前回よりもタイムが上がった」などタイムトライアルで成長を実感できたものですが、一人練習ではそうはいかない部分が多い。
しっかりと自己管理が出来ないと、ジョギング練習だけの日々が続き、スピード練習が疎かになってしまうものですが、
「平日はジョギング、週末にスピード練習やトレイルラン」
そのように刺激を入れて走ることで、気分の入れ替えが出来るでしょう。
あなたの目標がフルマラソンで2時間台だとしたら、1キロを4分15秒以上で42キロを走る力をつけないといけません。
「イーブンペースが良い」と聞きますが、ゆっくり走ってもどうしても後半はペースが落ちるものです。その状態を考えて、無理をしすぎない程度に1キロあたり2~3秒程速いペースで押していくことも必要です。
また、
「ペースを上げてるつもりはないのに、なんか速いぞ」
そう思ったら、体調が良い調子です。普段の練習が実を結んだのでしょう。
『目標が高すぎるとレースで失敗する。
リラックスして無心になった時のほうがタイムが良い。』
日によってはそんな時もあります。
自然体で良いタイムが出せる日が毎日続けば、あなたは飛躍できます。
でも、無理はしないようにクールダウンとアイシングは確実にやりましょう。
必要ならば、テーピングをして走ると痛みは和らぐので効果的です。
目標の自分に早く到達できるように祈っています。
スタミナ、スピード作りにはトレイルラン
あなたは上り坂、下り坂は得意ですか?
そして、登山コースなどを走るトレイルランは練習に取り入れていますか?
私は高校から陸上部で走り始めて、山に囲まれた学校でしたので午前授業で終わる土曜日の午後の練習は、学校の裏山の登山コースを走るトレイル練習になることがありました。
ゴロゴロとした石、むき出しの木の根、避けながらの木々、繰り返されるアップダウン。脚力の向上と、呼吸が深くなる分心肺機能の強化にもなる有効な練習です。
大学でも20分ほどジョギングした所に、標高が低いですが山があったので練習にいったものです。
そして、社会人になって走友会に所属し、静岡県の富士登山駅伝に出場するようになり、練習の一環として地元の八王子の陣馬山の山頂まで頻繁に練習に行ったものです。
ペットボトルを持参して持ち帰る人がいるほどの湧水、走り終わった後のアイシングを兼ねた浅い川の冷たい水。
トレイルランは一緒に走る人の車の中など、荷物置き場がない場合はトレイルランリュックで走ることに対する煩わしさや走りづらさはありますが、自然の力を貰える澄んだ空気で呼吸できることは、大都会では実感できない強みでしょう。
駅伝大会に向けての練習として、富士山の御殿場コースを山頂まで走って登るトレイルラン練習もしますが、富士山には固い土の地面よりも「砂走り」と言われる海の砂浜のような砂利の足元のコースがあることが難しくも、やりがいのあるコースです。
このコースは富士登山駅伝の4区にあたりますが、アスファルトやトラックの固い地面しか走っていない方には、一歩ごとに埋め込まれていく足は違和感があり、つま先着地で素早く足の設置時間を減らす走りが必要になってきます。
海の砂浜を走る時も上手く走れない時と同様、走るコツが身についていない方には辛いだけのコースになってしまいます。ただ、標高2000m過ぎから始まる富士登山駅伝の5区は固い土の地盤になり、着地は安定しますが上り勾配が厳しく約4.5キロのコースで標高1000mを登りますので、上りに強い方にはオススメです。
平坦コースを走れるようになることも大事ですが、足と心臓に負荷をかけて速くなる練習をすることも良いでしょう。
私は100キロマラソンの練習のためと、箱根駅伝の観戦のために箱根湯本駅前から芦ノ湖までを約30キロゆっくり走り込む練習もしていますが、この国道一号線はガードレールに囲まれた歩道があまり存在しないので、安全を重視する方にはおすすめ出来ません。
また、車の交通量が多く排気ガスも多いので、ランニングの練習に頻繁に行くには向かないかもしれません。ただ、「箱根駅伝の5区を走ってる実感」は強く感じられます。
普段の練習とは違う「体と足に負荷をかける」ことで、普段とは違う部分が鍛えられて力強い走りが出来ることでしょう。
トラック練習に飽きた方は、是非実践してみてください。
サブスリーを出す走力の維持
皆さんは何年のどこの大会で、何分の記録を出した時が一番覚えていますか?
私が初めてのサブスリーを出した時は、2001年11月のつくばマラソン。
選手向けのバス乗り場で「つくばは平坦で走りやすいから良いでしょ~」と話しかけてくる男性の言葉を聞いて平坦だと思っていましたが、実際は
「なだらかな上り坂が永遠と続くコース」
そんな印象に私は思えました。
大学内の構内コースを3キロほど走ってから一般道に出て、一直線に走り続ける。
5キロを19分30秒前後を徐々にペースが落ちつつも維持し、30キロの通過が
1時間59分50秒。
「サブスリーにはキロ4分ペース」を意識していた私は、
「このペースで行けば、後半落ちても3時間は切れる」と認識したのでした。
私の前や横には、同じペースを刻む市民ランナー。
人の後ろや横に位置して一緒に走る「付いていく」というペース走は、長距離ランナーにとっての基本の走り。
トップランナーかは分からないが、学生の頃の延長で今も走っているのだろうと思わせる力強い走り方には、刺激を受ける。
ゴール地点は、筑波大学内のトラック内で私は「2時間52分58秒」で完走し、
「サブスリーランナー」という称号の地位に達したのでした。
初の3時間切りを達成した時の実感として、大事なことは
・普段から5キロを20分前後で軽く維持できる力を持つこと
・自分一人で頑張るよりも、周りに引っ張ってもらう気持ちで力を極力使わない
・30キロまでは余力を持って走れる走力、残り12キロを気力で走り切れる精神力
・小さなアップダウンをこなせる脚力の維持
これらが大事だと実感しました。
あれからフルマラソンの完走回数も16回に達し、練習しないと走れませんが極端な緊張感なく、レース中の体調不良にならない限りは2時間台を出せるようになったのでした。
「結果を出すまでは誰もが苦しい。
でも、結果を出せるようになると意外と楽しい」
それは走ること以外でも仕事も、家庭でも同じではないでしょうか。
結果を出すまでの努力の過程が大切です。
タイムに負けても、自分に負けるな
あなたの目標とするタイムはありますか?
フルマラソンは「辛いことの象徴」のようによく例えられますが、辛いからこそ完走した後は讃えられますし、自分の強みになります。
走ることが好きではない方には、フルマラソンなんて「走って何が楽しいの?」と言われることが当たり前ですが、周りに理解されないからこそ誰にでも出来ることではないと自分に自信がつくのです。
私が初のフルマラソン完走をしたのは、2001年3月のマウイマラソン。
20キロ中盤から疲労からくる気持ち悪さがあり、後半失速。歩くようなペースになりつつも、なんとか完走したのでした。
2時間台の記録を出すには、1キロあたり4分15秒以内のペースを刻み続けることが必要になってきます。「あぁ~、つらい。もう辞めようかな」という気持ちになるのは、上手く行っていないことの象徴なのです。
嫌なことから逃げる、避けることは簡単。でも逃げても良いけど、あなたはどの部分が成長するでしょうか?
「もう嫌だ。つらい。途中棄権しよう」
そのようにマイナスな気持ちになり、走る気持ちがなくなってしまうのです。
「投げやりな気持ちになりつつも、ゴールはしたい」。
その気持ちがあるのならば、挑戦することをおすすめすします。
ペースを維持する気持ちを持ちつつも、自分に負けない気持ちを持つ。
「確実に記録を出したい!」
その熱意が走る原動力と、あなたの強みを上手く生かしていけば、
サブスリーを出すことが可能になることでしょう。
「もう自分には無理だ」そう思ってしまうと、
行動に移す気持ちがなくなってしまいます。
「出来る所まで、少しずつやっていこう!」その気持ちが途切れないのならば
「なぜ自分は頑張っているのか?」
その答えが決まっていない、自分の部屋に掲げてもいないことは、惰性で練習する気持ちになってしまうので、目標を持って行動に移しましょう